株式会社ユウメディア
副社長 山崎 暁
――ユウメディアに入社した経緯を教えてください
ユウメディアに入社する以前は、不動産の営業をしていました。その不動産会社ではそれぞれが顧客を持っていて、会社組織というよりは個人事業主の集まりのような形でした。「売上が上がっていればいい」という社風もあり、各々が自由に仕事をしていればよかったので、その点では楽でしたね。
不動産営業をはじめて7~8年経った頃に、叔父である社長から「ユウメディアで働かないか?」という打診がありました。
とはいえ、同人誌即売会の企画運営という仕事はまったく未知の世界。「とりあえず一度見ておかないと」と思い、同人誌即売会に行ってみました。そこに広がっていたのは、大勢の人たちで賑わう活気のある世界でした。「こんなにたくさんの人が来場するのか!」と衝撃を受けたのを覚えています。これだけの人を惹きつける仕事に魅力を感じ、「やらない理由はない」と思い、入社を決めました。
――経営幹部として入社されて苦労されたことはありますか?
入社した当時は、中間管理職、経営幹部的な立場の社員がおらず、社長の実現したいビジョンを戦術に落とし込んで伝える幹部社員が一人もいない状態でした。だからこそ、経営者と社員の間に立つ人間としてスムーズに入ることができた気がします。社員からすれば、「社員の声に耳を傾けてくれる人が来た」という感覚だったかもしれませんね(笑)。
現在は、組織づくりを強く意識して業務を遂行しています。幹部社員の育成まではできていないですが、役職者の育成など少しずつ組織の基盤を固めているような段階です。
組織を健全に機能させていくには、社長が実現したいビジョンを戦術に落とし込み、それを社員に浸透させて実行していくサイクルが欠かせません。社員に対して期待値が高い分、求めすぎるところはあるのですが、抽象的な理想やビジョンを文字や形に落として示していかなければ社員も動きにくいでしょう。まだ満足できるレベルではないのですが、少しずつ形になっています。2014~2015年頃に、売上がグッと上がったことがあったんです。その時、自分の実力以上に数字が上がったことが、今ふり返ると戦術面を強化できない足かせになっているのではないかと感じています。
――組織を強化するため、今はどんなことをされていますか?
以前は縦割りだった仕事の構造を大きく変えて、「全社員がある程度いくつかの仕事をして横のつながりを持つ」という方向性を打ち出しました。
ユウメディアは細かい単位で部署が分かれているのですが、「どの範囲まで誰が決めていいか」という裁量が明確化されていなかったため、部署内で責任のある意思決定が円滑にできていないという課題があります。
私が入って解決することも多いのですが、経営幹部が現場に関与し続けていると、現場の人たちが育たないものです。自律した組織にしていくためにも、もっと仕組み化を進めていかなければと思っています。
しかし、規律でガチガチに縛ってしまうのはユウメディアの社風に合っていないんですね。ある程度の役割と裁量を明確化し、その中で責任のあるリーダーを育てていく。そのバランスが難しいです(笑)。
社長からは、「バランスを間違えると会社が面白くなくなる、ダメになる」と言われています。30年にわたる経営経験から導き出された言葉なので、何かしらの確信があるのでしょう。ここは考えながら、慎重に整えていきたいと考えています。
――現在、二代目後継者としてどんなことを意識させていますか?
大企業の社長だと、株主など外部の目が光っていますから、求められたことに対して迅速に応え、数字を示さなければいけません。言い訳ができないというプレッシャーも相当厳しいものがあると思います。その点、オーナー企業だと「しょうがない」が言えてしまう甘い部分があるのではないでしょうか。
ただ、ゼロからスタートさせた創業者は、様々なリスクを負って、自分のやりたいことを自分自身に課して実現していきます。甘えが入る余地がないんですね。しかし、会社の土台がある状態から引き継ぐ後継者の場合、甘い部分に溺れてしまうリスクがありそうです。だからこそ、経営目標を作成し、その数字に対して責任を持つというプレッシャーを自分で作っていくことで、健全な経営を意識しています。
とはいえ、私自身は今はまだ目の前のことに対して「こういうことをしなきゃ!」と考えていくレベルで、経営全体のことを深く勉強するところまでいけていないんですけどね(笑)。
――社員育成の際に、心がけていることはありますか?
「任せる」ということですね。大阪でのイベントの時のことです。最初の数回以降、会場との打ち合わせは私が帯同せずに社員に任せるようにしました。できるだけ人に頼らずに自分たちで仕事を回していく成功体験を得てもらいたいからです。困ったらすぐ相談に来るのはしょうがないですけどね(笑)。
スタッフへの接し方については、細かい部分で失敗しても画一的な対応をしないであるとか、ある程度考える時間を設けてあげたり、成長を促せるようにと考えています。
コミュニケーションに関しては、とにかく一緒にいることを意識していますね。月に一回一緒に食事をする機会を設けています。そういったことを続けていくことで、成功体験が自信になり、信頼関係も作られていき、少しずつチームとしてバランスが取れるようになってきました。
現場が一番大切である一方、いつまでも私が現場に出続けるわけにもいかないため、少しずつ仕事をスタッフに任せられるようになればと思っています。
経営面に携われる幹部社員の育成は、今後の課題ですね。ユウメディアには変に古株の幹部はいないので、私がスムーズに入れたという側面もあるのですが、私たちが次のステージに進むためにも、幹部人材を育てていかなければならないと考えています。
――ユウメディアの今後の展望について教えてください
ユウメディアが掲げているミッションは、「趣味の生活を大切にするお客様の夢をかなえること」。「うちはこういう業態です」といった具体的なものではなく「趣味」という幅広いゾーンの中で最高のサービスを提供していくということです。
敢えて同人誌業界に限定することなく、ミッション自体に幅を持たせているんですね。幅を持たせているのですが、ミッションからブレないことが大事だと考えています。たとえば急に株取引を始めるだとか、不動産業を始めるといったことは絶対にありません。
事業展開としては、海外への進出も視野に入れていきたいと考えています。私自身、限られた市場を取り合うのではなく、幅広い視野で色んなところにビジネスを提供したいという想いがあるため、海外もユウメディアのマーケットに入ってくると思っているんです。これまでフランスや台湾・香港でイベントを開催したこともあり、大きな手ごたえを感じてきました。
2020年、東京オリンピックの際に、ビッグサイトといった大規模なイベントを開催できる会場が使えなくなるため、現状のままでは売上が大幅に下ることは避けられません。直近でそういった状況が見越せているので、ランニングコストを抑えて対応し、その中でも上手くイベントを開催しながら利益を生み出す体制の構築を目指しています。
本当にずっと未来の話になりますが、私の代だけでなく、「更に次の世代にユウメディアを引き継いで残してほしい」と考えています。
<インタビュー情報>
株式会社ユウメディア
副社長 山崎 暁
会社ホームページ http://youmedia.net/index.html